お父ちゃんサンタ。
街がキラキラ輝いて、すれ違う人たちはなんだかウキウキしている。
そんな人たちを横目に、今日もいつも通り残業して、私はアパートへと帰る
「ふぅ、ただいま」
誰もいないのに、ひとり呟いて靴を脱ぐ
これも、いつものこと
何気なく足元を見ると、見知らぬ靴が視界に入る。
それと同時に、
「おかえり」
と、懐かしい声が聞こえてきた
その懐かしい声のする方へ顔を向けると、そこには一升ビンを持ったサンタクロースの姿
―今日は12月24日
世間ではクリスマス・イブと言われている
ひとり暮らしで彼氏のいない私には無縁のイベントだと思っていたのだが、ここ数年、サンタクロースがやってくるようになったのだ
………と言っても、その正体は私のお父ちゃんなのだが
ちゃんとサンタクロースの格好までしてるという、徹底ぶり(ヒゲはないけど)
「お父ちゃん、来るなら来るって連絡してよ。乙女の部屋に勝手にあがるなんて信じらんない」
ベッドに仕事用のカバンを投げると、カバンがぼすんっと跳ねる
そのまま私はベッドに座り、床に座っているお父ちゃんに話し掛ける。
テーブルの上には、私の実家では有名な地酒と、おつまみの袋。
あと、コップが2つ用意されている
「お父ちゃんじゃない、サンタクロースだ。今日も遅くまで仕事か。そしてお前、乙女って歳じゃないだろ」
ぐさり
お父ちゃんの言葉がささる
「うぅっ。傷つくなぁ…オンナはいつまでも乙女でいたいものなんですぅ〜」
胸に両手を当てて、傷ついたアピールをしてみるけど、お父ちゃんは気付かない
「今年も彼氏はいないのか」
ぐさり、ぐさぐさっ
お父ちゃん、あたしをそんなに傷つけて何が楽しいんだ…
「いい人がなかなかいないんです〜。サンタさんが連れてきてくれればいいんだけどね〜」
ちらり、とお父ちゃんの方を見ながら言ってみるけど、やっぱり気付かない
「いい人は連れてこれないが、」
がさがさと、大きいカバンの中を探るお父ちゃん
そこから、タッパーを3つ取り出してテーブルの上に置いた
「これは連れてきた」
「あー!お母ちゃんの料理!さっすがお父ちゃん!」
カボチャの煮物、肉じゃが、きんぴらごぼう
お母ちゃんの作る料理は本っ当にうんまいのです
お母ちゃんに作り方を聞いて何度か自分でも作ってみたんだけど、何でか同じ味にならなくて…一体何が足りないのやら
「だからお父ちゃんじゃない、サンタクロースだと言っている」
タッパーの蓋を開けながらぶつぶつ文句を言うお父ちゃん
開けられたタッパーからは食欲をそそる、やさしいにおい
あぁ…懐かしいにおいがしてきた
「はいはい、ありがとうございます、サンタさん」
両手を合わせて拝むポーズをしたけど、それには感心がないようで、黙々と晩酌の準備をするお父ちゃ…ではなく、サンタさん
「ほら、お前も食うだろう?」
「もちろんです!」
ベッドから降りて床に正座。
一升ビンを持って、
「ささ、サンタさん、まずは一杯」
「おう、ありがとな」
サンタさんが持ったコップへと地酒を注ぐ
「おっとっと。ほら、お前も」
「かたじけない」
今度は、サンタさんから私のコップへと地酒が注がれる
「ありがたきしあわせ〜」
注ぎ終わったコップを両手で持ちながら頭の上へ
ひれ伏すようにお礼を言えば、苦笑いするサンタさん
「なんだそれ。ほれ、乾杯っ」
サンタさんと私のコップが軽く触れて、かちゃんっと音を立てた
それは、晩酌…いやいや、ちっちゃいクリスマスパーティーが始まる合図だった
ケーキやシャンパン、クリスマスツリーなんて、おしゃれなものはないけど、懐かしいものに囲まれて、これはこれで楽しい
…まぁ、サンタさんの口からは、たまには帰ってこいだの、はやく結婚しろだのと、親が言うような言葉しか出てこないのだが
って、お父ちゃんなんだから、そりゃそうか
お母ちゃんの作ってくれた料理と、地酒を持ってきてくれたお父ちゃんサンタには、頭があがりませんよ
ふと、意識が戻ったのは明け方
いつの間にか私はテーブルに突っ伏して寝てしまっていたらしい
背中にはブランケットがかかっていた
部屋を見渡すとサンタさんの姿はなく、ちっちゃいクリスマスパーティーをしていたテーブルは綺麗に片付いていて
そこにはお母ちゃんが作ってくれた煮物が入ったタッパーひとつと、メモ紙が
『身体には気を付けろよ。サンタクロースより』
そのメモ紙には見覚えのある、ひょろひょろとした文字が書かれていた
「……へっ、最後までサンタさんですか」
ちょっとだけ、鼻の奥がつんとした
来年は私がサンタになって実家に帰ってやるかな、なんて思ったけど、それまでにプレゼントという名の彼氏を見つけられるのか、と自分で突っ込みを入れてしまった
来年のクリスマスまではまだ時間があるからなんとかなるだろう…なんて思いながら、お父ちゃんサンタがくれたお母ちゃんの煮物を一口
ちょっと早いけど、私は仕事へ向かう準備を始めた
……………………………
何年か前に考えたクリスマスな小話。
思い出しながらぽちぽち書いてみた。
文章ひどいけど、みなさまの妄想力でなんとかしてくださいな←ヲィ
みなさま、素敵なクリスマスを〜
そんな人たちを横目に、今日もいつも通り残業して、私はアパートへと帰る
「ふぅ、ただいま」
誰もいないのに、ひとり呟いて靴を脱ぐ
これも、いつものこと
何気なく足元を見ると、見知らぬ靴が視界に入る。
それと同時に、
「おかえり」
と、懐かしい声が聞こえてきた
その懐かしい声のする方へ顔を向けると、そこには一升ビンを持ったサンタクロースの姿
―今日は12月24日
世間ではクリスマス・イブと言われている
ひとり暮らしで彼氏のいない私には無縁のイベントだと思っていたのだが、ここ数年、サンタクロースがやってくるようになったのだ
………と言っても、その正体は私のお父ちゃんなのだが
ちゃんとサンタクロースの格好までしてるという、徹底ぶり(ヒゲはないけど)
「お父ちゃん、来るなら来るって連絡してよ。乙女の部屋に勝手にあがるなんて信じらんない」
ベッドに仕事用のカバンを投げると、カバンがぼすんっと跳ねる
そのまま私はベッドに座り、床に座っているお父ちゃんに話し掛ける。
テーブルの上には、私の実家では有名な地酒と、おつまみの袋。
あと、コップが2つ用意されている
「お父ちゃんじゃない、サンタクロースだ。今日も遅くまで仕事か。そしてお前、乙女って歳じゃないだろ」
ぐさり
お父ちゃんの言葉がささる
「うぅっ。傷つくなぁ…オンナはいつまでも乙女でいたいものなんですぅ〜」
胸に両手を当てて、傷ついたアピールをしてみるけど、お父ちゃんは気付かない
「今年も彼氏はいないのか」
ぐさり、ぐさぐさっ
お父ちゃん、あたしをそんなに傷つけて何が楽しいんだ…
「いい人がなかなかいないんです〜。サンタさんが連れてきてくれればいいんだけどね〜」
ちらり、とお父ちゃんの方を見ながら言ってみるけど、やっぱり気付かない
「いい人は連れてこれないが、」
がさがさと、大きいカバンの中を探るお父ちゃん
そこから、タッパーを3つ取り出してテーブルの上に置いた
「これは連れてきた」
「あー!お母ちゃんの料理!さっすがお父ちゃん!」
カボチャの煮物、肉じゃが、きんぴらごぼう
お母ちゃんの作る料理は本っ当にうんまいのです
お母ちゃんに作り方を聞いて何度か自分でも作ってみたんだけど、何でか同じ味にならなくて…一体何が足りないのやら
「だからお父ちゃんじゃない、サンタクロースだと言っている」
タッパーの蓋を開けながらぶつぶつ文句を言うお父ちゃん
開けられたタッパーからは食欲をそそる、やさしいにおい
あぁ…懐かしいにおいがしてきた
「はいはい、ありがとうございます、サンタさん」
両手を合わせて拝むポーズをしたけど、それには感心がないようで、黙々と晩酌の準備をするお父ちゃ…ではなく、サンタさん
「ほら、お前も食うだろう?」
「もちろんです!」
ベッドから降りて床に正座。
一升ビンを持って、
「ささ、サンタさん、まずは一杯」
「おう、ありがとな」
サンタさんが持ったコップへと地酒を注ぐ
「おっとっと。ほら、お前も」
「かたじけない」
今度は、サンタさんから私のコップへと地酒が注がれる
「ありがたきしあわせ〜」
注ぎ終わったコップを両手で持ちながら頭の上へ
ひれ伏すようにお礼を言えば、苦笑いするサンタさん
「なんだそれ。ほれ、乾杯っ」
サンタさんと私のコップが軽く触れて、かちゃんっと音を立てた
それは、晩酌…いやいや、ちっちゃいクリスマスパーティーが始まる合図だった
ケーキやシャンパン、クリスマスツリーなんて、おしゃれなものはないけど、懐かしいものに囲まれて、これはこれで楽しい
…まぁ、サンタさんの口からは、たまには帰ってこいだの、はやく結婚しろだのと、親が言うような言葉しか出てこないのだが
って、お父ちゃんなんだから、そりゃそうか
お母ちゃんの作ってくれた料理と、地酒を持ってきてくれたお父ちゃんサンタには、頭があがりませんよ
ふと、意識が戻ったのは明け方
いつの間にか私はテーブルに突っ伏して寝てしまっていたらしい
背中にはブランケットがかかっていた
部屋を見渡すとサンタさんの姿はなく、ちっちゃいクリスマスパーティーをしていたテーブルは綺麗に片付いていて
そこにはお母ちゃんが作ってくれた煮物が入ったタッパーひとつと、メモ紙が
『身体には気を付けろよ。サンタクロースより』
そのメモ紙には見覚えのある、ひょろひょろとした文字が書かれていた
「……へっ、最後までサンタさんですか」
ちょっとだけ、鼻の奥がつんとした
来年は私がサンタになって実家に帰ってやるかな、なんて思ったけど、それまでにプレゼントという名の彼氏を見つけられるのか、と自分で突っ込みを入れてしまった
来年のクリスマスまではまだ時間があるからなんとかなるだろう…なんて思いながら、お父ちゃんサンタがくれたお母ちゃんの煮物を一口
ちょっと早いけど、私は仕事へ向かう準備を始めた
……………………………
何年か前に考えたクリスマスな小話。
思い出しながらぽちぽち書いてみた。
文章ひどいけど、みなさまの妄想力でなんとかしてくださいな←ヲィ
みなさま、素敵なクリスマスを〜
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